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【医療広告ガイドライン徹底解説②】
ホワイトニング・矯正・インプラント
診療内容別に見る医療広告ガイドラインの適用例をご紹介


歯科医院のWebサイトやパンフレット、SNSなどで治療内容を紹介する際、気をつけなければならないのが「医療広告ガイドライン」です。広告は、ただ目を引けばよいというものではなく、患者さんの正確な判断に資するものでなければなりません。


特にホワイトニング、矯正、インプラントといった自由診療を中心とする治療は、表現の自由と規制のはざまで、医院側も頭を悩ませがちです。


この記事では、診療内容別に違反しやすい広告表現と、さらに実践的な対応策をご紹介いたします。


ホワイトニング編:ビフォーアフター表現と“体験談”の落とし穴


ホワイトニングは、見た目の改善効果がわかりやすく、患者さんにとっても関心の高い診療内容ですが、そのぶん広告表現の規制もあります。特に「ビフォーアフター写真」「患者の声」「施術回数と効果の明示」には注意が必要です。


■ホワイトニング広告でのNG例


  • 「たった1回でこの白さ!」と写真付きで効果を強調

→実際の効果に個人差があるにもかかわらず、確実性を暗示する表現は誇大広告に該当するためNG。


  • 「20代女性:一度で白くなり感動しました!」という体験談

→口コミや体験談の掲載は医療広告ガイドラインで禁止されているためNG。患者の主観に基づく治療効果の表現が他の患者さんに誤解を与える可能性があるためです。


  • 「当院のホワイトニングは他院と違って強力です」

→他院との比較優良広告に該当し、禁止されている。


■ホワイトニング広告での適切な表現例:


  • 「当院では、過酸化水素を含む薬剤を用いたオフィスホワイトニングを行っています。一般的に3〜5回の施術で変化を感じる方が多いですが、効果には個人差があります」


  • 「ホワイトニングの効果は食生活や歯の状態により異なります。副作用として一時的な知覚過敏が生じることがあります」


ビフォーアフター写真を用いる場合は「患者自らが求めて得られる情報であること」や「患者が容易に確認できるよう連絡先を記載すること」「治療内容や費用、期間(回数)を明記すること」「リスク・副作用の説明」などの要件をすべて満たす必要があります。ウェブサイト等の場合は、限定解除の要件に合致することで掲載可能となります。


矯正歯科編:資格表示と“誤認リスク”の防止策


矯正歯科では、「専門医」「認定医」などの肩書き表示が集患に直結するため、つい強調したくなるところです。しかし、資格の有無や正確な名称を誤って表示すると、患者の誤認を招くリスクが高く、ガイドライン違反になります。


■矯正広告でのNG例


  • 実際は学会所属にもかかわらず、認定医と表記

→誤認表示の典型例。患者さんが資格者による治療だと誤解する恐れあり。


  • 「矯正専門医院だから安心」

→「専門」という語は、学会等による正式な認定がなければ使えない。


  • 「見た目が良くなるだけでなく、むし歯もできなくなります」

→医学的効果を断定する表現は原則NG。


■矯正広告での適切な表現例


  • 「当院には、日本矯正歯科学会認定の矯正歯科医が在籍しています(2025年4月現在)」

  • 「歯列矯正は、審美性の向上に加えて、歯磨きしやすくなるなどのメリットもありますが、装置によっては口内炎や痛みが出ることもあります」

  • 「矯正治療は保険適用外(自由診療)であり、費用は約○万円〜○万円です(患者さんの症状により変動します)」


資格表示は、正式名称+所属団体名+有効期限を明記するのが安全策です。


インプラント編:成功率・安全性の表現が慎重さを要する分野


インプラントは、手術を伴うため患者さんにとって不安の多い治療です。ゆえに広告で「安全」「長持ち」「安心」などのイメージ訴求がされがちですが、これらは誤認・誘導表現に該当しやすく、違反リスクが高いといえます。


■インプラント広告でのNG例


  • 「10年保証付きなので安心」

→保証内容が実態に即していない場合、根拠のない過大評価とされる。保証の具体的内容と条件を明記する必要があり。


  • 「成功率99%のインプラント治療」

→成功率を記載する場合は、エビデンスと出典の明記が不可欠。ない場合は違反。


  • 「安全な最新インプラントシステム使用」

→「安全」という語は絶対性を示唆するため、単体使用はNG。

→「最新」は最上級の表現となり、比較優良広告に該当するためNG。


■インプラント広告での適切な表現例


  • 「当院では、CT撮影を用いた術前シミュレーションを行い、安全性の向上に努めています。ただし、インプラントには外科的処置が伴い、稀に腫れ・痛み・骨の定着不良などが発生する可能性があります」


  • 「インプラントの治療費は1本につき○万円前後で、上部構造・素材によって異なります(自由診療)」


  • 「インプラントの治療期間は通常3ヶ月〜6ヶ月ですが、骨の状態や体質により延長されることもあります」

→安心・安全という言葉を使いたい場合は、「〇〇に配慮した治療」や「〇〇を重視した方針」といった表現に変えると適切です。


以上のように、それぞれの診療内容には特有の表現リスクがあります。広告文を作成する際には、「誇張はしないこと」「症例写真には治療の詳細を付記すること」などの原則を守る必要がございます。


弊社では自院のサイトは問題ないかといったご相談も受け付けておりますので、気軽にお問い合わせください。


医療広告ガイドラインの「限定解除」とは


ホワイトニング・矯正・インプラントと治療ごとに解説してきましたが、ホワイトニング・矯正・インプラントなどの自由診療に関する広告を行う際に重要となるのが「限定解除の要件」です。


医療広告ガイドラインによれば、以下の8項目をクリアする必要があります。


1.患者が自ら求めて入手する情報を表示するWebサイト等によること

2.自由診療であることの明記

3.費用の明示

4.治療のリスク・副作用の説明

5.治療内容の詳細な説明(治療法の名称、治療内容、費用、治療期間・回数など)

6.未承認の医薬品・医療機器の明示


ビフォーアフターや体験談については


7.個人の感想であることの明示

8.患者本人からの同意取得と証拠保管


これらの「限定解除」要件を満たすことで、自由診療に関する情報も適切に発信することが可能になります。医療広告ガイドラインは厳しすぎて、これでは何も宣伝できないのではないかとすら思えてきますが、上記の「限定解除」は、自由診療の訴求力を維持しながらガイドラインの違反とならないようにする重要なポイントです。


まとめ:信頼こそが最大の広告になる


ホワイトニング、矯正、インプラントといった自由診療は、患者さんの期待値も高く、医院の収益にも直結する分野です。だからこそ、医療広告ガイドラインを遵守した誠実な表現が、長期的な信頼と集患につながります。


たとえ広告表現に制限があっても、医院の「強み」や「姿勢」は伝え方次第で十分にアピール可能です。正しく伝え、患者と信頼を築く。その第一歩が、ガイドラインに沿った情報発信なのです。